金属板を曲げる
基本的には折り紙を折るように金属の板を曲げます。ただし、折り紙と異なり金属の板は硬いので、人の力で簡単に折り曲げることはできません。ベンダーという専用加工機を使うのですが、板厚に合わせて金型を選定し、直線的に折り曲げます。ベンダーはてこの原理で材料を折り曲げます。V形に加工されたダイと呼ばれる金型をワークの下にセットし、V形の中心にセットしたパンチと呼ばれる金型を上にセットし、少しずつ折り曲げていきます。ワークはパンチとの接地面を支点としてV形の角度(通常の金型は88度)まで曲げられていきます。
大きいカバー
そもそも材料が入手可能かどうかという制限はありますが、幅4メートルまでの曲げ加工が可能です。スチールで3.2mm、ステンレスで2.0mmくらいまでの厚みに対応しています。板厚が厚くなればなるほど1回の曲げ加工当たりの付加荷重が大きくなり、機械の能力的な制限に抵触します。特に外観重視のカバーはつぎはぎの加工を嫌う傾向があります。大きなカバーの曲げ加工は、複数のスタッフで協力して行います。可能な限りクライアントの要望に応えられるよう体制を整えています。
小さい部品
電子部品など小指の爪ほどの小さな部品加工にも対応しています。小型のサーボベンダーは、モーター制御でストローク調整を行うため、曲げ制度が安定しています。ベンダー金型の最小V幅は4mmですので、薄い板厚の部品であっても最低3ミリ程度の曲げ長さが必要になります。あまりに小さいものは、ピンセントでつまんで曲げることもあります。小径のチューブクリップなどを加工する際には、チューブの径に合わせた特型を作成し、R形状に加工します。
厚いブラケット
スチールで12mmまでの厚みを曲げます。主なブラケットの厚みはt4.5~t6.0になります。ステンレスは6.0mmまでとなります。L型のブラケットは、他の部品に溶接して、組付け用の金具として使用します。また両面に穴をあけて、ねじ止めにて部品同士を組み立てる際に使われます。片面を長孔にして調整しやすくすることもできます。強度が必要な場合は、三角のリブを溶接して強度を高めます。
薄いシム・バネ材
シムは、金型パーツなどで組み付ける部品の高さ調整のために使われます。微調整に使われるため、0.3mmや0.5mmなどの薄い材料が使われます。ステンレス製のクリップなどに、バネ材が使われます。バネ材の曲げ加工は、材料のスプリングバック値が高いため、曲げ角度の調整が必要になります。また材料のバネ性は圧延方向に対して有効なため、圧延方向と平行に曲げ加工すると、効果を得ることが出来ません。四方向に対してバネ性が必要な場合は、ランク角度を調整して有効値が得られるようします。
FR曲げ
内Rが大きな部品や筒状の加工をする際、曲げRを複数回曲げることで、指示された形状に近づけます。例えば内R100の90度曲げの部品の場合、板厚を考慮しない曲げRの円弧長は200×3.14÷4で157になります。送りピッチ15.7mmで11回曲げると10面のカクカクしたR100曲げになります。更に細かく送りピッチ3.925mmで41回曲げると、40面の細かいR100曲げにすることが出来ます。細かくすればそれだけ加工時間がかさみコストアップの要因となるので、用途・要望によって粗さが変わってきます。
深曲げ
板をコの字型に曲げる場合、基準面(中心面)から出るフランジ長さは、少なくともどちらか一方は基準面より短くならないと金型に干渉して曲げることが出来ません。90度に折り曲げる場合、金型は中間の45度の位置に来ます。面の長が1:1:1の場合、2回目に曲げる際、1回目に曲げたフランジが金型の中心線にきてしまうのです。このような折り曲げ部品の場合、グースネック金型を使います。中心部分を逃がしたアヒルの首の様な形の金型で、深曲げの部品を加工します。
曲げ交差
板を90度に曲げる際、厳密には90度00分という具合には曲げることが出来ません。そこまでシビアに曲げ角度にこだわるという案件は稀有ですが、その部品が使われる場所、用途、接合する相手などによって考慮する必要があります。例えばボックスとカバーの場合、そもそも寸法で逃げを取っている場合もありますが、内側に入るボックスは若干90度より入れ気味に、外側に被さるカバーは若干90度より甘めに加工する方が良いでしょう。加減が逆になるとうまく勘合しなくなるケースもあります。